トンヌラ頑張れ。超頑張れ。

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□ トンヌラ王子の冒険 □

神子・3

雪深い大地を往き、ついにロンダルキア大神殿にたどりついた王子さまたち
ところが、目の前に現れた建物は
生まれ故郷のお城、そっくりそのままだったのです

「どういう……ことなの………………?」
 僕は息をのんでお城の切妻を見上げた。吹雪のなかに、懐かしい壁の紋章とからみつく
ツタが見える。こんなはずない。どうして、こんなところにサマルトリア城が……
王子は無言のまま先に立って城内へ足を踏み入れた。僕も彼に続き、懐かしい門をくぐる。
門番の兵士、大臣……外つ国よりの訪問者たち……城内を行き来する人々の姿も、そっくり
そのままだ。そして――
「ルル………」
懐かしい許嫁の姿がそこにあった。可憐なドレスに身を包み、あどけなさを過分に残した
僕の義妹……。その無垢な美しさに、僕は顔を伏せた。こんなに汚れてしまった僕が、
彼女につりあうはずもない。
(ルル、ごめん……)
ふっと彼女が顔をあげ、僕に微笑みかけた。
ああ――君は、こんな僕を許してくれるのかい?受け容れてくれるのかい?
僕は期待に打ち震えながら、腕を差し伸べた。
しかし、僕の手は……彼女の身体をすり抜けてしまったのだ。
「えっ!?」
僕は驚いてあたりを見回した。気付けば大臣も兵たちにも、僕らの姿は目に見えていない
様子だった。ズィータ様の胸のあたりを、白い鳩が擦り抜けて飛び去っていく。
これは……幻なのか?
『ピピン、義兄さまのご沙汰は依然聞こえませんの?』
ルルが微笑みかけた相手は親衛隊長の青年、ピピンだった。ルルはいかにも親しげに
ピピンにもたれかかり、その様子はまるで睦言を交わす恋人たちのようだった。
『ええ、旅人の泉を出て以来、まるで消息は知れませぬ』
それを聞いたルルは――なんてことだろう。認めたくない。だけど……
ルルは、さも嬉しそうに笑ったのだ。
『やはり、亡くなったのかしら』
上等なドレスを贈られたときのように。大好きな果物を頬張るときのように。ルルはあく
まで無邪気に、あくまで嬉しげに……………………笑ったのだ。
『女よりも大きな乳房をして……あんな気味の悪い片羽者に嫁ぐなんて、真っ平でしたもの。
 お父様に感謝をしなければいけませんわね』
『殿下の存在はサマルトリア王家の恥、つねにそう仰っておられましたからな』
……嘘だ。父上が、ピピンが、ルルが、そんなことを……
「うそだ…………………うそだよっ……」
僕は耳を塞ぐ。けれど彼らの話し声は頭の中へ直接流れ込んでくるのだ。
『ねえピピン、これでやっと貴方と婚礼の式を挙げられますのね』
「やめてよっ……!!こんなの………………嘘だっ!!!」
僕の叫びと同時に、何かが砕け散る衝撃音が響いた。同時に風景が揺らぎ、ふっと消えうせる。
「あ………………?」
僕はこわごわと顔をあげる。と、視界にうつる景色はまるきり違うものに変わっていた。
 広々とした天井の荒れ果てた見知らぬ建物……壁や柱には邪悪なけだものの彫刻が
施されている、異教の神殿だ。王子が剣を構えて立っている。その足元には砕け散った
紫水晶の欠片が散らばっていた。
「下らねえまやかしに踊らされるんじゃねぇよ」
王子は吐き捨てるように言ってのけた。
「今のは……まぼろし、なのか……?」
僕の問に答えるかのように、こつりと固い靴音が響いた。
「……素晴らしい、なんと強固な精神でしょう。精霊の守りなしに幻を打ち破るとは」
「ハーゴンッ………!!!」
その男を見て、僕は思わず叫んでいた。マリア様を魔物に襲わせた神官だった。
「ですが、今ご覧になられたものは事実ですよ。貴方の可憐な許嫁は親衛隊長と関係を
 結び、貴方の死を望んでいる」
「だ………黙……れ……!!」
「その膨らんだ腹で妻を娶られるおつもりか?出来損ないの姫君よ」
「黙れ、黙れぇっ!!!!」
……突然、僕の唇はズィータ様に塞がれた。
「ンむっ……」
いやだ。恥ずかしい。他人が見ているのに何を考えているんだ。
……そう言いたいのに、腰から力が抜けてしまう。
「挑発に乗るな、馬鹿野郎」
神官も、さすがに毒気を抜かれたような目で僕たちを見ていたが――
「なるほど……噂に違わぬ方だ、ズィータ殿下は」
肩をすくめて笑う。王子は表情を変えなかった。
「それでは私も、この台詞を言わせてもらいましょうか?
 ……『我と手を組まば、世界の半分を与えよう』」
「……………………………………」
「如何ですか?貴方の曽祖父が口にした言葉ですよ」
僕も昔語に聞いたことがあった。それは、かつて竜王がロトの勇者に対して持ち掛けた
取引きだ。
「…………………………クッ。ハハハハハハハハハハハッ!!!!」
それに対して、王子は……さも可笑しいというように、笑い出したのだ。
「な………………?」
そんな反応を想像だにしていなかったのか、ハーゴンが戸惑ったように彼を見やる。
「貴様……本当にシドーを喚び出せると思っているのか?」
「何だと……?」
「面白い。やってみろよ」
嘲り笑いを浮かべながら剣の切っ先をつきつける。対照的にハーゴンの表情からは笑いの
影が掻き消えた。
ムーンブルグの街を襲わせたのは確かに彼……邪神の降臨につれて地上へ現れた魔物達の
仕業だった筈だ。なのに王子のふてぶてしいまでの冷静さはどうしたことなのだろう。
彼の言葉を侮辱と感じたに違いない神官は懐から暗紫色の呪石を取り出し、頭上にかかげた。
「飢えたる闇の子よ――今すぐ地上に降り、この者を喰らいつくすがよい!!」
呪石の表面が血の色に輝く。しかしそれはほんの一瞬のことで、神官の声は大広間に
空しく響くだけだった。
「………………!?な………」
明らかに狼狽しながらふたたび呪石をかざす。
「気が済んだか?」
剣の切っ先を神官に向けたまま、ズィータは哀れみさえ交えた笑いで見下ろす。
「く………何故………何故だ!!!何故!!!???」
ハーゴンは血走った目を見開き――やがてその視線が僕の上で止まった。
「………………まさかズィータ王子、貴様は……なんと罪深い事を………」
(――!?)
「罪深い?ハッ、お前の口からそんな言葉が出るか」
そして――王子の剣が音も無く神官の胸元に突き立った。
ハーゴンは己の身に何が起きたか判らぬように目を見開き、二三度身を痙攣させた。
あまりに静かな、あまりに呆気ない幕引き。神官は断末魔の声すらあげず床にくずおれた。
「神に見放された神官など――ただの人間、か。くだらねえ」
王子はハーゴンのマントで剣についた血のくもりをぬぐい、何事もなかったように屍骸に
背を向けた。
「帰るぞ」
「………あ、あの、ズィータ様………………」
『罪深い』。その意味を問おうとして僕はぐっと言葉をのみこんだ。きっと僕にとって
そんなことは知らない方が幸せにちがいない。
僕は王子の手を握り、あとをついていく。彼の真意がどうであろうと、今はこのぬくもりに
身を委ねよう。

 邪教の神官を倒した王子様は 生まれ故郷のお城に帰ってきました
そして ともに旅をした王女様は 
王子様の花嫁になりました

 僕もズィータ様もローレシアに帰ることはなかった。
雪に閉ざされ、痩せた大地のロンダルキア。それでも民達は懸命に生きている。
城の者たちは僕達を大変な歓迎をもって迎えてくれた。正統な王家の血筋と、女神の化身として。

 ロンダルキアの伝統である黒絹のドレスをまとって、僕はズィータ様と婚礼の式を挙げた。
互いの指先を噛み切り血を分かち合うことで共に生きる証とする。昔の僕だったら邪悪な
儀式と感じたかもしれない。だけど……少し塩辛い王子の血は彼の命の味がして、僕は
ドレスの下で密かに勃起していた。


 そして、僕はふたごの赤ちゃんを産んだ。
赤ちゃんたちの顔を見たとき、ようやく僕は神官の残した言葉の意味を知った。
 ひとりはズィータ様によく似た輝くように美しい男の子だった。
もうひとりは――あのとき祠の地下で見た、そして今も部屋の柱に刻み込まれているこの
国の神シドーそのものの姿をしていたのだ。
六本の腕。灰色でうろこのような肌。裂けた口。背中の皮膚から飛び出した骨はちょうど
翼のような形をしていた。

そうか。
あのときズィータ様は己の身を媒介に、神の子を僕に身篭らせたのだ。いくら神官が呼び
出そうとしてもシドーが現れるわけはなかった。すでにその身は僕の胎内に顕現していたの
だから。
ズィータ様はこのためだけに僕を………いや、止そう。そんなことはどうだっていい。
「シドー」はしわがれた声で泣きながら手足をうごめかせている。蒼褪めた表情のまま
とまどう侍女を無視して、僕は赤ちゃんたちを抱き上げた。
………ああ。おんなじだ。
どちらの子もせいいっぱいの産声をあげて、あたたかい体をしている。生きている。
ズィータ様が産屋に入ってきた。僕が「シドー」を見せると、彼は赤ちゃんの頬をかわり
ばんこに撫でてくれた。ぶっきらぼうな手つきだったけど、それが僕には何よりもうれしい。

 神様のことなんてどうだっていいんだ。僕もこの子も「できそこない」なんかじゃない。
ここには僕を受け容れてくれる人が居る。……ここが僕のいられる場所だから。
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Date:2009/11/01
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Thema:二次創作:小説
Janre:小説・文学

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