トンヌラ頑張れ。超頑張れ。

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□ 短篇(ロンダルキア編) □

愛(忠誠心)

 永遠に消えぬ種火、"ようがんのカケラ"を宿した暖炉で石造りの部屋は雪国の寒さを忘れる
ほどに温かい。もっともそれは濃密に漂う情交の名残のせいもあったのだろうが。
 忘我の域からようよう醒めたトンヌラは、汗ばんだ身体を寝台から起こした。乳白の肌には
主の愛撫の跡が数多の桜花となって散っている。足元にきちんと揃えておかれた故郷の装束を
目に留めると、ふっと微笑ってゴーグルを手にした。砂っぽいサマルトリアの地を往くときの
必需品だ。ロンダルキアの妃はなにかを思いついたように頷きながらゴーグルを無造作にかぶり
シーツを裸の肩に巻き付けて夫を振り返った。少年らしくいたずらじみた表情で。
「やあ、ズィータ。いつも妹が世話をかけるね。ありがとう」
「あ?妹?」
「そうさ」
トンヌラは軽やかに身を翻してみせ、寝台に腰をかける。
「いるだろ、君の所に。たよりない僕の妹が」
「ああ---妹、か。いるな。泣き虫で、無駄におっぱいばかりでかくて、役にも立たない
 チンコをつけたみっともないお前の妹が」
「う、う……そこまで言わなくてもいいじゃないかぁ」
「ほら、すぐ泣く」
かるく涙目になる王子の頬をぶにんと引っ張ってズィータは笑う。
「ひどいなあ……だいたい、君は妹のことどう思ってるのさ。そんなこと言うなんて、あ、
 愛してるから妃に迎えたんだろ」
思い切った言葉は夕餉の苺酒が残っているのか、はたまた扮装のせいかなのか。
「妃?牝奴隷の間違いだろ。俺は女を愛したことなんかないからな」
一瞬記憶の水底に起きる小さな波紋に、ズィータは気付かない振りをした。
「妹が聞いたら悲しむだろうな」
「お前んとこは兄妹そろって泣き虫か」
また泣きそうになる王子の髪をいささか乱暴にかきまわす。
「あいつの泣き顔を見るとイライラする。馬鹿なんだよ。周りに心配かけないようにって
 一人で何でも抱え込もうとしてよ。他人がどう思おうが勝手だろう?ああいう馬鹿には、
 何も考えてない様な笑顔が似合う」
「……ば、馬鹿馬鹿言わないでよ」
「お前じゃねえ、馬鹿な妹のことだ」
「ぅー………………」
砂漠の国の王子は口を尖らせて黙り込んだ。
「あいつは俺の所有物だ。誰にも指一本触らせたくねぇ……あいつを泣かせていいのは
 主人である俺だけだ」
王子の白い頬は苺を溶かしたミルクのようにうす赤く染まる。
「……そういうのを世間だと愛って言うんじゃないの」
「はっ!?ば、違ぇよ!」
ぶにゅうううぅ。そんなことを言うのはこの口かとばかりに、今度は左右に引っ張る。
「ごえんにゃふぁい、ひがいまふゅひがいまふゅ」
「妹が馬鹿なら兄貴も馬鹿だな」
しかし、そう言う主の頬も心なしか同じ色に染まっていた。
「兄貴なら聞かされてるだろ。あいつの方こそどうなんだ?恵まれた育ちの王族が奴隷に
 堕とされて---辺鄙な雪国で魔物どもに囲まれて一生飼い殺しなんだぜ。逃げ出すことも
 考えられないくらい馬鹿なのか?」
「うん……」
王子は頬に触れる大きな手をそっと両手に包み込む。
「僕…っと…妹…は、君のたくさんの怒りも…哀しみも……何も知らないで幸福な子として
 育ったから……はじめは確かに絶望しかなかった……奪うことしか知らない人だって……
 でも、そうじゃなかった。自分の心も……性別さえ決められない煮え切らない僕を、乱暴な
 やりかただけど導いてくれた……いるべき場所を与えてくれたから……
 たとえ奴隷だって構わない」
「…………」
「愛しています」
優しく、しかし確かな口調で囁いてから、王子は大急ぎで付け足す。
「って、その!妹が……言ってた」
慌てふためくトンヌラを、ズィータはやにわに引き倒した。細い身体が寝台に沈み込む。
「馬鹿だな、アイツは」
「んッ……」
そのまま顎を捕らえ、口付ける。
「…………っは。き、キミって奴は!!友達にこんなことっ!」
真っ赤になって抗議するのへ、竜王は邪気のない笑いを返した。
「やっぱ違うな。男の唇じゃ」
友の耳元へ、聴こえるか聴こえないかの声で囁く。
「…………馬鹿な妹に伝えとけ……言わなきゃ判らないのか、ってな」
「……え?え?あの……それって」

 何度も目をしばたかせる王子のゴーグルを荒っぽくむしり取り、ズィータは改めて妻の唇へ
深いキスを贈った。





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Date:2009/11/17
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Thema:二次創作:小説
Janre:小説・文学

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