トンヌラ頑張れ。超頑張れ。

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□ 短篇(ロンダルキア編) □

竜の霍乱

 トロルにメダパニ---とでも言えばよいのだろうか。北の台地に座す剛胆にして不敗の竜王が
風邪をひいて寝込むとは。尤も、なんともないと意固地に主張し続ける当人を無理矢理寝床に
追いやったのは伴侶のトンヌラであったのだが。

 その日のズィータは朝から妙に口数が少なく、必要以上に人と接しようとしなかった。とはいえ
常から気紛れな主君のこと、その微妙な異変に気付いたのはトンヌラだけだった。
「ちょっと、失礼します」
 トンヌラは気怠気に執務をとるズィータに近付き、額と額を触れ合わせた。
「あぁ?……何してんだ」
「やっぱり、熱がありますね」
誤差の範囲を越えて熱を帯びる主の身体に、トンヌラは眉を顰める。
「だめですよ、風邪のときはちゃんと休まないと!ほら、あとはバズズさんにお任せして」
「ちょ、おい…」
不機嫌そうな表情ながら、妻のされるがまま手を引かれていくのはやはり風邪による倦怠感の
所為なのだろう。
「熱なんか無ぇよ……お前の気のせいだって」
「気のせいじゃないです、ほら」
ずぴ、と小さく洟をすすりながら抗議するズィータを、トンヌラは器用な手さばきで夜着に
着替えさせる。
「ちょっと身体が熱いのと、ノドと鼻の奥が痛ぇのと、ふらふらするだけだ」
「それって……思いっきり風邪ですよ!」
滅多に体調を崩さない主なので、自分が風邪をひいているのかどうなのかが
判定できない様子だ。おそらく本能的にじっとして自然に回復するのを待っていたのだろう。
……猫みたいだな、とトンヌラはためいきをついた。
「お前とは鍛え方が違う。ほっといたって治るだろ」
「だめです!あったかくしておとなしく寝てれば、より早く治るんですよ。
 ほっといて長引かせるよりちょっとの辛抱です」
もっともな妻の言葉に、ズィータはしかめ面で鼻まで布団に潜り込む。
「たく……面倒くせぇな」
鼻声のつぶやきに、思わず漏れてしまいそうになる笑いを噛み殺す。
「お薬、用意してきますね」
まだぶちぶちと文句を言い続ける主をあとに、トンヌラは厨房へと向かった。
 …こんなことズィータ様には言えないけど、なんだかちょっとだけ……嬉しいな。
ロンダルキアへ来てから、ズィータの中では竜としての血が目覚めつつある。
人間離れした強さを身につけていく彼が、なんだかどんどん手の届かない場所へ行って
しまうようで---正直、寂しくもあった。そんなズィータが人間的な弱みを見せた事が、素直に
嬉しかったのだ。
 すりつぶした薬草を小鍋にふた束、色が変わって来たらさらにもう一束。しぼった満月草の
エキスを加えて、できあがり。二人で旅をしていたころ、体調を崩したトンヌラのために
ズィータが煮てくれた薬草だ。どろどろした緑の液体はつよく薬のにおいがする。
(うー、効きそう)
トンヌラは顔をそむけながら小さな盃に薬を注いだ。
「はい、できましたー」
盆に載った盃を見るや、ズィータは露骨に嫌な顔をする。
「んだよ、そのニオイはっ!冗談じゃねぇ!」
あ、鼻はつまってないんだな、とトンヌラは妙な事に感心した。
「飲んでください」
「んぐ……そんなバブルスライムの死骸みてぇなモン飲むくらいなら、治らないほうがマシだ!」
子供のようにだだをこねる夫を、トンヌラはめっ、と睨みつけた。
「ばかなこといわない!僕だって我慢して飲んだんですから」
「サマルトリアのやつは普段から草食ってっからなんともねーんだろ」
「ひどいなあ」
なんというか、本当にだだっ子のようだ。子供の頃から病気をした経験がなく、どうしていいのか
分からないのかもしれない。
「長引いたらシドーやフォルに感染っちゃいますよ」
生まれたばかりの息子たちの名前を出され、苦虫を噛み潰したような顔で黙り込む。
「……分かったよ…飲みゃあいいんだろ、飲みゃあ」
杯を后の鼻先につきつける。
「ちょっと薄めて、 甘口にしろ」
「はい?」
首を傾げて覗き込む妻の乳房を、ズィータはやにわに握りしめた。
「ひゃうっ!?」
膨れ上がった乳房から母乳が噴き出し、黒いドレスの胸を濡らす。
「ミルク入れて薄めろっつってんだよ。そしたら飲んでやる」
「えー、そんなことしてだいじょうぶかなあ」
「じゃ飲まない」
「もう!! しょうがないな!」
ぷいと背を向ける主に、トンヌラは赤面しながらふかく溜息をついた。
おずおずと胸元をくつろげると、幼い顔つきに似合わぬほどに膨れ上がった乳房が露になる。
「…………ぁふっ」
 白くつややかな乳房をみずから握りしめ、噴き出す母乳を杯に注ぐ。みるみるうちに乳汁は
杯を満たし、縁から溢れた。
「ふぅっ……はぁ……はい……どうぞ」
恥ずかしさに視線を逸らし、主に乳の杯を手渡す。胸元を正そうとするトンヌラをズィータは
手で制した。
「しまうな。そのままで見てろ」
「え?あ……はい」
ズィータは杯を指でかき混ぜ、ゆっくりとした動作で唇をつける。
(あ……僕のミルク……飲まれちゃう……)
頬が熱く火照る。…何故だろう。ものすごく恥ずかしい。ああ。そんな。底まで舌を入れたり
しないで。いや。音立てながら舐めないで…っ。
横目でそんな妻の様子を見、ズィータはにやりと笑った。
「なぁに乳首膨らませてんだ?」
「あ……い、言わないでください……っ。あ、洗ってきますね」
からになった杯を手に逃げる様に立とうとするトンヌラの手首がぐいと掴まれる。
「わ!?」
ぼふ。軽い身体はやすやすと寝台に引っ張り込まれ、枕の羽毛が舞いあがった。
「熱いな……お前も熱あるんじゃねぇのか」
「ち、違……だって、ズィータ様があんな……っ!」
病人とは思えない力で、有無をいわさず妻を抱きすくめる。
「あったかくして寝りゃいいっつったろ……お前、肉布団になれ」
「ふえぇぇ!?」
「返事はー?」
「うう……はぁい……」
半泣きで答えるトンヌラに、傲慢な主は熱に浮かされつつも満足そうに笑った。
すぐに規則的な寝息が聞こえてきた。苦笑しながらそっと汗に濡れた夫の前髪を整える。
 ……ほんとに、あらゆる意味で、子供みたいなひとだなあ。

目が覚めたら、たまごと香草のおかゆをつくってあげよう。
いつもよりあたたかい布団のなかで、トンヌラはすこし笑って瞼を閉じた。


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Date:2009/11/25
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Thema:二次創作:小説
Janre:小説・文学

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