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□ 鋼鉄のアレフ □

鋼鉄のアレフ・7

明け方の空に白い月が浮かんでいた。

……もう、夜は終わるんだ。

アレフは立ち止まると壁に手をつき、苦し気に鉄錆のにおいの咳をした。腹の中まで
鉄になっていくような気持ちだった。
足元に散った血を踏んで消し、また歩き出す。その足取りに迷いはなかった。城壁を護る
トヘロスの結界は半魔となったアレフの身体を確実に蝕んでいた。

死ぬものか。君がくれた命なんだ。

 すけさんの髪のにおいを、やわらかな輪郭を思い描くと、いまや当たり前のものと
なってしまった目眩がするほどの頭痛も忘れられる。
だいじょうぶ、オレは死なないよ。

「アレフ……にいさま……」
 結界の青い光線をまたごうとする彼を、城壁の影から少女の声が呼び止めた。質素な夜着に
外套を羽織っただけの聖女が歩み寄る。
「行かれるのですか」
"……………………………………"
「……無理も……ありませんね。ごめんなさい……私は……私たちは……
 兄さまたちだけに世界を押し付けて………………あまりに勝手な…………」
声をつまらせる妹にアレフは首を振った。自分たちが勇者という役割を演じねば
ならなかったように、ル・ルゥもまた聖女という名の椅子に否応なく座らされたのだ。そして
半ばにして舞台を降りた自分たちと違い、彼女は立派に人々の喝采に応えようとしている。
"……ル・ルゥ。すけさんを……どうか頼む。ちゃんとごはんを食べるように、夜は眠るように、
 それからときどき髪に花をかざってあげて。赤ちゃんに絵本を読むときは、ページを
 めくってあげてほしい"
「え……!?」
"…………すけさんにね、赤ちゃんが産まれるんだ"
おだやかに微笑んでアレフは告げた。何か訴えたげなル・ルゥへ先回りをするように続ける。
"ちがうよ、ル・ルゥ。これはオレたちの意志。オレたちがおたがいの子供がほしいって
 思ったから……"
「…………………………にいさま…………」
"だから---もしもその子が戦いなんていやだって言ったら、どうか、
 ふつうに育ててくれないか……約束したんだ、すけさんと"
「…………ぁ……」
無垢な少女の表情で、ル・ルゥは涙をこぼす。アレフは鉄の腕で妹を抱き寄せ、
子供の頃のように頭を撫でてやった。
"たのんだよ"
「はい……はい…………!」
 活発でよく頭がはたらいて、のんびり屋の兄をいつも気に掛けていた小さな妹姫。
自分も冒険の旅がしたいとだだをこね、戦闘で負傷した兄を見ると大泣きした無邪気な少女。
平和なときが続けば、いつかは憧れの"兄"のとなりを歩くことができたのだろうか----

ル・ルゥもまた、ロトの血に運命を翻弄されたもののひとりだった。





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幼い手はいつのまにか離れていた。

気付けば黒髪の少年は視線のずっと先、丘の上を走っている。
「すけさーん、オレ、先に行っちゃうぞ!」
笑いながら、その影はどんどん遠くなっていく。
まって。ボク、あなたみたいに走れないよ。
泣きそうになりながら、ちいさな王子は懸命にあとを追った。

ゆっくりでいいから。ゆっくりあとからついてきてくれればいいから。

いとしい声が風にのって聴こえた気がした。






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Date:2009/11/24
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Thema:二次創作:小説
Janre:小説・文学

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