トンヌラ頑張れ。超頑張れ。

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□ 短篇(冒険中) □

Re:

ーーー何時もの夢を見ているのだと思った。

王家の人間のみが立ち入ることを許されている禊ぎの地、"旅人の泉"を訪れたとき、彼は忘れ得ぬ
女神に逢った。無論それがかつて出会った石の女神でも、ましてや地上に降り立った本物の女神でも
ないことはすぐに分かった。泉の番人から先客のあることを聞かされたときは、唐黍の髪の
うすねぼけた少年を想像していたのだが……
 数年ぶりに目にしたサマルトリアの王子は、ズィータの思いも寄らないような成長を遂げていた。
生まれついての双形ということはひそやかな噂に聞いていたが、正直眉唾ものだと思っていた。
ラーミアの伝承に興味を抱いてからありとあらゆる書物を紐解きそうした事例を調べてきたが、
たいていが双形と呼ぶにも中途半端な出来損ないばかりだったのだ。奇形的に肥大した雌芯を
雄のものと見誤ったもの、或いは醜い肉の裂け目を面白半分に誇張して伝えたものーーー。
 しかし、目の前にいる"王子"はあきらかにそれらとは違っていた。小児のそれとは異なる、
はっきり女といっていい乳房の膨らみ。骨ばり、素っ気なく締まった少年の下腹にはもうひとつの
しるしが控えめに自己を主張している。そして……

「ズィータ……様!?」
心地よいボーイソプラノが彼の名を呼ぶ。少年の涼やかさと少女の可憐さを併せ持つかんばせは、
まさしくかの女神像に生き写しだった。
 ひそかに早鐘を打つ己の動悸が、ズィータは許せなかった。思慕の対象として長らく胸に秘めて
いた神聖な面影が、憎むべきロトの一族の血肉を与えられてそこに在る。
まちがいだ。なにかの。
 当初は、間抜けな王子からは利き腕を奪い魔物と番わせてやる心づもりでいた。だが当人を目の
当たりにしてズィータは考えを変えた。お前などが女神ラーミアである筈がない。卑しい
出来損ないの雌奴隷として、快楽を求めるだけの獣に堕としてやる。

 無垢な王子は狂おしい性の暴力に抗い、打ちひしがれ、やがて他愛もなく屈していった。しかし
淫らに喘ぎながら男を求めても、それは夜のあいだだけだった。昼の間は少年らしく彼を拒み、雌の
歓びにひたる自分を激しく嫌悪しているようだった。純粋な女であればことは簡単だったろう。
力で勝る雄の子を宿すため、もっと早い諦めの境地が隷属というかたちでやって来る。なまじ半分
男の魂と肉体を持っていたが故、トンヌラは彼に抗い続けた。いつまでも心を手折らせぬ"王子"に、
ズィータはわずかな戸惑いを覚えていた。
---まさか、こいつは本当に女神の現し身だとでもいうのか。
 トンヌラの態度に微妙な変化が現れ始めたのもちょうどその頃だった。どこかズィータの心を慮る
ような、不思議な優しさがまなざしに宿るようなった。つとめて彼を受け入れよう、仕打ちを許そう
としているかのように。
(冗談じゃ……ねえ)
かえってトンヌラの身に加えられる陵辱は激しさを増した。朝になっても床から起き上がれない程に
夜毎痛めつけられ、人格を否定する痛罵が投げかけられた。それでも、トンヌラには貫くと決めた
信念があるかのように態度を改めない。
やめろ。お前はただの……出来損ないの女だ。雌便器だ。
 赦されるわけにはいかないという思いが、ズィータの中に強くあった。母を破滅させ、父の心を
頑なな檻に閉じ込める因となった自分。数多の命を手にかけてきた自分。
はじめて像と出会った頃よりもはるかに沢山の罪を重ね、諸手を血に染めて来た。
もう、女神に微笑みかけられる資格などないのだ。
赦しを拒絶するように、ズィータは抗った。

 ---しかし。ただハーゴンの呪詛を受け止めるためだけに作られた邪神の器---ひとの姿を
していない赤子を、トンヌラはもうひとりの赤子と隔てなく抱きしめた。その姿を見たとき、
彼はふっと諒解した。

……女神……か。すべての命を産み、すべてを慈しむ大地母神。
……そうか。

 ズィータははじめて、おぼろげながら己の憧れの理由に気がついた。
だが、それを認めるつもりなどさらさらない。それは生涯を通して同じ事だろう。

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 とは言え、近頃ではやっぱりそれは間違いだったのではないかとも思い始めている訳で。

不便な雪国の暮らしに馴染み落ち着いて来たトンヌラは生まれつきの天然な性格を取り戻し
つつあった。時にびっくりするほど大らかで、間が抜けていて、日なたのような温さ。
……本当に、こんなのが女神なのだろうか。やはり信じられない。ああ、悩んで損をした。

 やっぱり今でも夜になれば泣かされるし、乱暴な態度は変わらないのだけれど---
トンヌラにとっては、それは大きな違いだったのだ。


僕の、竜の王子さま。悩んでる顔より、いじわるな顔のほうがずっと素敵だよ。


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Date:2009/12/05
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Thema:二次創作:小説
Janre:小説・文学

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