トンヌラ頑張れ。超頑張れ。

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□ diva affonda □

Diva affonda・8

「夜の闇よりも深い…漆黒の髪……揺らめく黄昏の瞳……ついに手に入れた……真竜王よ……」
磨きあげられた巨竜の下顎骨に腰掛けた王は満足げに獲物の姿を眺め、真紅の酒に唇を濡らした。
王の私室として特別につくられた広間にはあらゆる異質な魔獣達が檻に入れられ、ひしめいていた。
薬で異常に筋肉を太らせられたグリーンドラゴン、聖水に半ば浸けられたままの骨竜……いずれも
王の遊戯のため人の手で改造を加えられたものたちばかりだった。
 常ならば王の気配を感じて牙を咬み鳴らし呪わしげな唸りをあげる檻の獣たちだが、かの竜が
運び込まれてからはその威に打たれたがごとく大人しい。
---流石は、獣の中の王---その頂点に立つ竜王よ。
葡萄酒の杯を手に、王は壁に磔となった竜に歩み寄る。
「飲るか。月宮の貯蔵倉より運び出された、百年物の美酒だ」
「……クソ野郎が……」
王の靴音にズィータは視線を上げ、吐き捨てた。その瞳には未だ黄金の炎が憎悪と燃えている。
すばらしい、と王は陶酔して呟いた。手首と大腿の動脈を縫い留めるかたちにふかぶかと
突き立つ魔法銀の大釘。幾重にも巻き付いた鎖は心臓を、喉元を戒めながら壁へと繋がっている。
魔獣たちの獄にはなおも"竜の子守歌"が低く流れていた。意識を完全に奪わぬ程度の呪歌は、
残された竜の血が沸き立つことを抑える。それでもなお牙を剥こうとする竜王の尽きせぬ
生命力、そして折れぬ心は想像をはるか上回っていた。それでこそだ。
「かつてはこの地にも多くの竜が棲んでいた……お前のように美しく、雄々しき竜の一族が」
金の竜眼を葡萄酒に透かして眺めながらベスティアは巨大な竜の頭骨を撫でる。
ほんの幼い頃、土から掘り出された巨骨の美しさを目にしてから---彼の心は竜に囚われた。
限りを知らないその力に。いかに獣に手を加え、身体そのものからつくりかえた所で
真の竜には到底及ばなかった。愚かな聖霊が人類を手助けし、偉大なる生き物を追い立てさえ
しなければ……地上は今でも竜たちの闊歩する楽園であっただろうに。
「竜王よ---さあ、お前の歌を聴かせてくれ。果実は熟した」
じゃらり、と鎖が鳴る。静まっていた魔獣達がいっせいに頭上を仰いで唸りを上げ始める。
「トンヌラ……!! 」
四肢を繋がれ、高く吊るされた王妃の姿をみとめてズィータは叫んだ。その顔は苦悶に歪み、
主の声にも反応を示さない。食いしばった歯の間からうめき声が漏れる。
「ぅ……あ……あーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
ふいに膨れた腹がびくびくと蠢き、トンヌラは目を見開いて悲鳴をあげた。と同時に股間から
透き通った液体がしぶく。破水だった。強制的に成長させられた胎児は子宮いっぱいに育ち、
すでに出産が進行しつつあった。
「いや……いや……いや……」
トンヌラは幾度も首を振り、血が滲むほど鎖を引いて両脚を閉じようとする。努力も虚しく
重力のままに胎児は膣に降りてきつつあった。破水が起これば出産は一気に進行する。
大きく広げられた脚の間に、うっすらと金の髪を生やしたまるい頭が見え始めていた。
「キサ……マァ…………!!!」
ズィータが激しく身じろぎする。釘打たれた傷口から血が再び噴き出した。
「母親似か」
上機嫌に笑う王の傍らで、シエロは虚ろな目で呪歌を繰り返していた。
竜と人---せめてどちらかだけでも自由になれば。そうする間にも赤子の頭は母親の胎を
滑り出し、はっきりと輪郭を浮かび上がらせていた。
「ぁあ……あ……おねがい……おねがい……赤ちゃんを……僕はどうなっても
 構いません……ずっと……魔獣を繁殖させる肉壺になったっていいから……だから……
 ズィータ様と……赤ちゃんだけは……たすけて…………!!!」
涙に顔を濡らしながら哀願する。途端に怒声がとんだ。
「馬鹿が!! ンな事冗談にでも言うんじゃねえ!てめえは……
 俺専用の性処理肉便器だろうが!!」
「急かずとも胎があけば望み通りにしてやろう。お前の不完全な揺籠に、竜卵は過ぎたる宝よ」
雨のように降り注ぐ羊水は石床に跳ね、大きな水溜まりを作る。王は汚穢溜を見るような目で
その滴りと、雌の臭いを嗅ぎ付けて鉄格子を噛み折らんばかりに暴れる魔獣を見比べた。
「鎮まれ、じきに珍味なる柔肉を味あわせてやる」
「--------------!!!」
びしっ。死力を振り絞る竜王の抵抗に鎖の輪がひとつ弾け飛ぶ。靴先にぶつかるその感触に
ベスティアは一瞬顔色を変えた。まだそんな力が残されているのか。焦燥した王は古代竜の
牙から研ぎ出されたナイフを抜き、磔のズィータの掌に突き立てた。声無き叫びが竜王の
顎から漏れる。出来る事ならこれ以上美しい竜の身体に傷痕をつけたくはない。
大きく開かれたトンヌラの脚の間にはっきりと赤子の輪郭があらわれた。
「いや……ダメエエエエェェェェェェェーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
絶望の叫びと共に、自身の重みで赤子が勢いよく母の産道から放り出される。

---ブチュッ。

落下の衝撃と肉の潰れる耳障りな音が響いた。わずかな間を置いてあがったのは、甲高い産声。
「ぁ………………え…………っ……?」
己の耳を疑い、母は恐る恐る視線をおとす。離れた足元の床には青く透き通る水溜まりが
赤子の身体を抱いていた。
「シエ……ロ……?」
ひとの形を失って潰れた『それ』は、幼い歌姫の成れの果てだったのだ。王の呪縛を振り切って
身を投げたシエロの肉–––スライムの弾力に嬰児は優しく受け止められ、
傷ひとつついていなかった。
びしっ…。びしっ。金属の裂け逝く音が断続的に鳴る。王はゆっくりとその根源に視線を移した。
竜王の輪郭がぼんやりと紫紺の陽炎に包まれる。竜の呪歌が絶えた今、暴走する力を抑える
ものは何もなかった。人としての命の蝋燭が揺らぐ時、竜王は真の姿へと変貌する。
かつて"ロトの勇者"が目にしたと同じ光景を、デルコンダルの王は目の当たりにしていた。
脈打ち、鎧の如き紫鱗に覆われて行く身体。人の自我が押さえ込んでいた窮屈な殻から解放され、
ズィータは大広間の天井を擦らんばかりの巨竜へと変異していた。

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Date:2009/12/20
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Thema:二次創作:小説
Janre:小説・文学

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